煩悩と惰性。

適当に日々思ったこと綴るところです。

十六夜のフォルトゥーナ 感想&批評。

公式HP。
http://lapislazuli-soft.com/main.php


Lapis lazuliの新作「十六夜のフォルトゥーナ」をプレイしましたので感想でも。

このブランドの作品を作品をプレイするのは初となります。八木沼氏の名前に惹かれて体験版をプレイ、良作になりそうな印象を受けての購入となりました。


※以下、ネタバレを含みます。


・音楽。9点。

BGM33曲、Vocal曲は2曲。量的にも質的にも十分。OPの「fortuna on the Sixteenth night」は数年前のfripSideの雰囲気を残しており、大変に好みです。文句なしですね。
欲を言えば、挿入歌とかもあると嬉しかったですかね。どの場面で流すのかと問われると難しいですが。


・絵。7点。

CG70枚、SDが5枚。
3桁の枚数をそろえてくる作品も多い中、70枚というのはちょっと少なすぎです。シーン数が計5つしかないのと、終盤にならないと出てこない服装があるため、日常シーンでのCG不足はあまり感じませんが・・・やはりもう少し欲しいところです。
立ち絵については、上記の通りCG枚数を補うように配置されているものもありますが、それを除くと物足りなさを感じてしまいます。特に乙女は95%以上が着物、小菜は100%制服でしたし。設定上仕方がないところがあるにせよ、シナリオの長さにあわせて、もっと素材が欲しかったところでしょうか。なお、表情とポーズは豊富で、服装以外は及第点以上かと。
質については、公式HPにもあるルシアのお風呂CGだけは骨格がおかしいですが、その他は身体を捻っているCGもなく、問題を感じませんでした。ヒロインたちがとても可愛らしく描かれており満足です。


・システム。7点。

Configは隠しキャラの音声ボリュームまで初期状態で公開されているのはちょっといただけないですね。
skipは結構な速度で、長いシナリオに対応できている印象です。ATS発動時に止まるようになっているのも親切設計でGOOD。
あと細かいことですが、マスター音量を最大にしても声が小さいです。パソコンそのものの音量を最大まで上げるかアンプを使ったほうが良いでしょう。


・演出。2点。

スクリプトが組まれており、派手にではないですが立ち絵が動くのは良いです。
ただ、そんな美点を打ち消して余りあるのが音響関連の酷さ。唐突にBGMが変わって違和感を拭えない場面は数え切れないほどありましたし、ルシア覚醒時には謎のSE音が不協和音として響き渡ります。はっきりいって、このあたりを担当した人はセンスが壊滅的ですね。せっかく良い楽曲なのに台無しです。

また、誤字脱字を多く見かけました。特に漢字の変換ミスは多かった印象です。文章が途中で切れているのもありました。完成度の低さは最も目に付きやすいネガティブ要素ですので、マスターアップ前に今一度チェックしてもらいたいところ。


・声優。9点。

全体を通じて問題なし。場面に緩急があったにも関わらず、一切の不安や違和感を感じませんでした。
特に紗中智亜さんの安定感は素晴らしいです。あと、 雪野玉さんの声は相変わらずすごくイイです。名義云々という話になるので、あまり深くは書きませんが・・・。


・共通ルート。7点。

最近では珍しい、一日一日を丁寧に描くタイプの日常系シナリオです。語彙の多さとテンポのよさに支えられた安定感を感じるテキストでした。伝奇的な伏線や、小菜と時雨の邂逅などの山場も用意されており、一つの物語としても共通ルートとしての役割という面でも全うしていていると言ってよいでしょう。
ただ一点、これは共通に限らずどのルートでもいえることですが、日常の描写の細かさに反して、盛り上がるべき場面が妙にあっさり終わってしまうのは惜しいです。強い感情の発露を描くのが苦手なのかな?と感じました。

私個人としては、毎日の起床から就寝まで食事の様子などをこと細かく描いていることを評価しております。莫大なテキスト量があるからこそ、人間関係など変化していくものを克明に描けているのですし、またその一方で不変のものが輝きますから。ただ、代わり映えのないものを延々見せつけられる、面白くないという意見も相応にありそうです。


・時雨ルート。9点。

時雨が姉の死を乗り越えて心を開き、主人公に信頼を寄せていくお話でした。この時雨の心境の変化が丁寧に、ひたすら丁寧に描かれており大変心地よいシナリオでした。最後に小菜と本当の別れをしても前を向く時雨の姿勢は、共通ルートとの対比として美しい表現だったと思います。小菜の声が時雨に聞こえたという奇跡も良い演出でしたね。

このルートに限った話ではありませんが、時雨の人見知りな性格は日常をしっかり描くこの作品にぴったりだったと思います。人付き合いに不慣れだからこそ出てしまう暴言など、あの不器用さから可愛さはかなりの威力がありますね。ツンデレではないのですが、本来のツンデレの良さに通じた良さがあります。


・小菜ルート。7点。

前半は幽霊少女であるこのみを成仏させるために主人公たちが奔走します。このみが成仏するシーンは予定調和ながらも感動的なシーンです。惜しむらくはその後の展開との関係性が薄く、ちょっと浮いた印象が拭えないところでしょうか。その後に小菜は成仏しないという選択をしてしまいますしね。
小菜と結ばれるまでの過程は時雨の恋心なども要素として入ってきており大変楽しく読めました。また、ハッピーエンドとはいえない結末も、希望と哀愁を漂わせていて味わい深いです。

このルートの難点は、終盤の主人公と小菜の決断が軽すぎることでしょうか。愛ゆえとは言え、人間から外れた存在になる主人公と成仏できない状態になる小菜、それは熟慮なく選択していい話ではないと思うんですけどね。あと、九条家の呪術は便利だなぁと。


・乙女ルート。5点。

九条家の始まりに関するお話が物語の主題になります。かぐやの想いなどは美しいのですが、現代に生きる九条の子孫である薫と乙女が九条家から逃げ出している立場なのでどうにも乗り切れず。古くからの血縁よりも、弓乃の存在などの等身大の人の物語にしておいたほうがよかったような。暴走して悪霊の巣窟に突っ込む主人公、肉体を代償にしたかぐやパワーの取得についても有耶無耶なまま代償を払わずに済む乙女など、強引な展開が目立ちましたし。また、脈々と受け継がれてきた能力であるはずの未来視も設定が全く活きませんでした。

乙女の主人公への情愛は登場当初からずっと続いており、二人の関係の変化が乏しいこと、乙女が暑苦しすぎることもややマイナス要因です。弓乃の死と乙女の想いについてはルシアルートで回収されるのですが、本当にそれこそ主題にして欲しかったですね。
告白後は、長年の願い叶った乙女の本当に楽しそうな雰囲気と、我侭になるあたりの可愛らしさは見所かと。分量的にはかなり少ないのが残念ですが。

あと、かぐやが翼人にしか見えないのは私だけだろうか・・・。


・ルシアルート。9点。

ルシアさんマジ天使。時雨は性格の変化によって人間味を感じさせてくれますが、対してルシアは不変さによって高潔さを表現してきます。彼女のルートが開放されるのは最後ということもあり、ルシアが甘えてくる場面ではギャップ萌えの威力がとんでもないことになりました。可愛すぎる。

シナリオの内容ですが、序盤の城址の悪霊を排除するあたりは乙女ルートと被るため大したことはなく。
中盤のノエル戦については、ゆり子、ノエル、ルシアそれぞれの想いが描かれており楽しめました。特に故意ではないとはいえ自分で撒いた厄災は自分の手で片付けようとするゆり子の姿勢は素直に格好が良いと感じましたね。
また、戦闘シーンについては肉弾戦と信仰力の複合的な戦いで、余すことなく全力でぶつかっているという熱を感じましたし、主人公にも活躍の場があるなど構成という面でも文句なしでした。信仰の力を聖句で演出するのは設定の勝利ですね。まあ、キリスト教について詳しくない身なので、圧倒されたというのもありますけれど。


ルシアルートの感想から外れますが、この作品のテーマは「姉の死」だったりするんですかね。死人当人である小菜は例外ですが、時雨は乗り越え、乙女は想いを継ぎ、ルシアは決別と、それぞれ違った方面からアプローチをしているのは偶然ではないと思うのですが。


・総評。

名作。

CG枚数、シーン数の少なさ、演出の残念さなど、明確な短所はいくつもあり、総合的な完成度という観点では、近年の大手メーカーが作る作品群と比べて劣る部分が多くあります。また、シナリオも決して万人向けとは言えず、むしろあまりの長さに投げ出す人が相当数いるでしょう。
それでも、真摯に良い物を作ろうという姿勢を強く感じましたし、(AIRっぽい要素があるのを除けば)独創性があり、かつ非常に練られた内容であると感じました。満足です。


Lapis lazuliには今後もいい作品を出してくれることを期待したいですね。こういう出会いがあるからエロゲは素晴らしい、そう思えた作品でした。
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