煩悩と惰性。

適当に日々思ったこと綴るところです。

魔女こいにっき 感想&批評。

公式サイト。
http://qoo.amuse-c.jp/01_mazyokoi/index.html


Qoo brandの新作、「魔女こいにっき」をプレイしましたので感想でも。

本作にて企画及びシナリオを担当されている新島夕氏の作品をプレイするのは始めてであるため、製作者単位の過去作との比較も行えませんのでご了承ください。

実質一本道であるため推奨攻略順はありません。ただしED後におまけのようなルート分岐が追加されるので、注意。


※以下、ネタバレを含みます。


・音楽。9点。

BGMは27曲、Vocal曲は5曲。
別売りのキャラクターソングを用いているわけではないのに、Vocal曲がこれだけ多いのは特筆するべき点ですね。

BGMは適度に主張があり、良い按配です。
Vocal曲の「Dragon Burger」とBGMの「昼下がりのお茶会」「満腹気分」はメロディラインが同一であるため、前者登場以後はどうしても口ずさみたくなるのはご愛嬌。トゥールットゥルットットゥ~♪
Vocal曲については「ヒステリア」が圧倒的な存在感でアンセム候補ですね。OP曲たる「花びらとりぼん」がそこまで記憶に残る曲ではなかったのを強く補う形になっています。どこかでヒステリアを聴けたら間違いなく高まるでしょう。


・絵。7点。

CG82枚(ありす15枚、零&カノン16枚、聖15枚、美衣11枚、崑崙8枚、あけみちゃん4枚、恋3枚、その他10枚)。
テキスト量との対比という点でも絶対的な分量という観点でも、CG枚数が足りていない印象を受けました。差分についても足りていないと感じさせられる部分が多く、量的には若干不満が残るかなと。コストパフォーマンスという観点では、フルプライスを越える9800円が定価なのですし、3桁かそれに準ずる枚数が欲しかったところですね。

CGの質については申し分なし。それぞれの原画さんは存分に力量を発揮しているように感じられましたし、塗りについても統一感があり、不満を感じるような部分はありません。
絵、というよりシステム寄りの話になるのですが、背景やCGと比較して立ち絵の解像度が妙に低く荒いのは残念。


・システム。7点。

Config設定項目は必要最低限ながらほぼ十分。一点、ウインドウの透明度は変更できたほうが嬉しかったかもです。全体的に動作が軽く、skip速度が速いのは良いですね。ウインドウサイズが変更可能なのも評価。

UIについてですが、テキストウインドウにカーソルを置かなければメニュー項目が登場せず、普段のプレイに邪魔な要素を排しているのは良い配慮かと。バックログからのジャンプ機能がないのはかなり残念ですが、バックログからタイトル画面に戻れるのは意外と便利でした。


・演出。4点。

スクリプトは殆ど組まれておらず、時々思い出したかのように立ち絵が動く程度です。もうちょっと動いて欲しかったと思います。
何箇所か漢字変換の誤字を見かけました。「全て」とするべきところが「統べて」になってるのが2箇所あったり・・・他はメモをとっていなかったので詳しくは憶えていないです。


・声。10点。

文句なし。
幅広い年代の声を演じたくすはらゆいさん、似て非なるキャラクターを演じた結衣菜さん等の声を聴いてると声優さんのすごさというのを感じますね。
個人的にはあけみちゃんを演じた鹿野まなかさんの声がすごく良かったのですが、駄目絶対音感を持たない私には誰かの別名義なのか等の判断がつきません・・・。

そういえば一箇所、歌音がフルネームで自分の名前を言うところがノイズっぽくなってました。録音環境のミスですかね。


・シナリオ。8点。

複数の時間軸を同時に描きつつ最後にそれを零さず一本にまとめており、しっかり伏線を撒いて回収していく等、構成の素晴らしさでは圧倒的です。地理的にも人間関係的にも狭くはないこの世界観をまとめきった手腕と、それに付随して「この先、どのように纏めるのか」とワクワクさせられた高揚感は他の作品では得がたいものでした。
この一点だけでも「魔女こいにっき」という作品をプレイした価値があったと言っても決して過言ではないです。

この物語が我々読み手に投げかけているメッセージも考えると面白いですね。正直、メッセージ性という観点では、この作品は盛りだくさん過ぎてプレイ終了後約1日たった今でも全然整理できておりませんけれども。どういう切り口で思考するのが良いのだろうか?と、考えられるだけの余地がある、これも殆どのエロゲでは味わえない貴重な要素かと思います。


とまあ、エロゲらしからぬ(?)評価するべきポイントが多い反面、気になったところも。

構成の精緻さに全力を費やした反動とでも言いましょうか、シナリオについては物語的というより論文的になっております。具体的には、場面の連続性がやや弱く、目に前にある問題に対して登場人物たちが葛藤する描写などはかなり薄く、「感動」を得にくい構成だと感じました。
これは個人的な所感ですが、エロゲをプレイする動機の一つに、シナリオ以外にも絵や音楽で没入感を高めて得られるもの、その最たるものとして感動を挙げる人は多いのではないでしょうか。そこを外してきているのは評価をするにあたり、大変に難しいところではありますね。
まあ、既に大ボリュームと呼べるだけの分量があり、ここから感情の機微を追加していくと製作者側は勿論のこと消費者側も辛くなりますし、消費者側にも幅広い作品を受け入れるだけの度量が必要だとは思うのですが・・・せめて、最後のありすと物語を終える部分については手厚く描写しても良かったかも知れません。


一応、各ルートの感想を簡単・適当に。

・恋ルート。

コンパクトながら、ふらふらとしていた恋が覚悟を決めて自分の夢に向かって走り出すまでの過程を美しく描いており、物語の序盤としては申し分ないクオリティだったかと思います。
恋は他校の生徒ということで、他のヒロインとの関係性を持たず、その後の登場頻度もほぼ壊滅的であったのが惜しい。彼女の物語をもっと見たかったです。


・あけみルート。

あけみちゃん可愛い。恋もそうでしたが、サブヒロインとは思えない貫禄を感じます。
父親との邂逅は切なさがあり、自身が娘であるという可能性を伝えないあけみちゃんの決断は、ただ長く生きてきているだけのジャバウォックには作れない物語のあり方だったのではないでしょうか。キャバ嬢っぽくて処女っぽくて可愛いのに、やはり大人な判断ができるとか、やっぱりサブヒロインとは思えない貫禄がありますね。


・美衣ルート。

「物語とは美しく、最高の状態で終わっておくものだ――」という常識というか持論というか、それを表現したシナリオでした。
ただまあ、魔女こいにっきを構成する一パーツとしての存在意義以上のものを感じられなかったというのも正直な意見であります。公式サイトや体験版で見ていたのより圧倒的に美衣がイイ女であったのを実感できただけで満足するべきなのかしら。

なお、この美衣ルートと後述の聖ルートは主人公のキャラがずいぶんと異なるため、別ライター担当なのかな、と思いました。彼女もありすなのにね。


・聖ルート。

他ルートと比べて心理描写、連続的な場面の展開が描かれた、他のエロゲに近い印象を受けるシナリオでした。それでも恋に落ちるまでの過程は急転直下のハードランディング気味でしたけれど。
天使でしかなかった聖が人となり、子供と親を介して人間になり、自分の人生という物語の語り手になっていくまでの過程を綺麗に描いていたと思います。
まあ、贅沢を言うと、ざっくりとした描写で進むこの作品に慣れつつあったこの中盤で、細かい描写をされると面倒に感じてしまうジレンマが。難しいね。


・三人衆ルート。

箸休めのような存在。アホの子な三人衆可愛い。堀田としかエロいことができなかったのが大変強い不満だったり。王よ、全員食べてしまいましょう。


・零&カノンルート。

前半の200年前の歌音との逢瀬についてはジャバウォックの来歴と時計坂の歴史を端的に語っており、なるほどな、と。歌音との逢瀬だけでカノンのHシーン枠を使い切ったのを確認したときにはどうするんだコレと思いましたが・・・カノンの肉体はどうであれ、その魂たる歌音と済ませているからいいのか、な?
先生、私は現代に生きる黒カノンさんとえっちぃことがしたいです!

後半は突然、厨二病バトルっぽい展開を見せるルートに変貌していて笑いました。終盤に近づいてからの異能力バトルは楽しくて好きです。それにしても唐突に出てきて強姦されて出番を終えたあの双子の存在意義って一体なんだったのでしょう。
しかしまあ、器であるカノン、夫婦喧嘩に巻き込まれてる崑崙、痴呆症なありすと結構なラインナップのヒロインたちですが、作り物でしかない零も相当可哀想な存在ですね。切ない。


・崑崙ルート。

崑崙ちゃん覚醒。こう、プレイ後に思い返すと、彼女が最も悲劇的で正統派のヒロインなのかなと。それが幻どころか嘘の上に成り立った生活であったとしても、主人公と仲良く生活をしていた彼女の笑顔と「風でしかなかった自分が、貴方のおかげで一時人間になれた」という呟きが切なすぎます。


・ありすルート。

正直、たくみとありすの関係性に運命的なものを感じられないんですよね。崑崙や歌音の物語と対比させてしまうと特に。彼女が特別なのは数十年にわたるジャバウォックと生活をしてきたという事実であり、そこで紡がれた深い愛だったと思うのですが、そこはエロゲの宿命もあってか非常に軽く流されてしまったのがどうにも苦しかったかなと。
にっきと現実の時間を逢わせるまでに長い長い旅をしてきた、なら最後は感動的な邂逅があってもいいじゃないか!とどうしても思ってしまうわけです。ここさえ盛り上げてくれたらなぁと思わずにはいられません。
一番美しいところで終わらない、本物の物語=人生というのはそういうものという強いメッセージが込められているようにも取れるんですけどね。


・アリス。

ヤンデレお后様。崑崙ちゃんの不幸は彼女の従者であったことですね。
現代の日本人の感性でいうと、愛を誓っておきながら妻を放置して遊びほうけていたジャバウォック王が全て悪い、ような・・・。
読み手ではなく語り手に、傍観者とならず自分の物語を、人生を紡ぐことが重要である、と読み取れるような終わり方ですが、正直「夫婦喧嘩は怖いぞ、妻は大切に」という切実なメッセージが込められているような気がしてならないのです私。

※ 6/13 追記。
魔女こいにっきを読むことで自分を慰めていた、停滞していたアリスに対してジャバウォックは「語れ」と言いました。

・アリスは魔女こいにっきの読み手であり、それすなわち「魔女こいにっき」というエロゲをプレイしている我々ユーザーの投影。
・読み手から語り手になれ。自分の物語を語れ。逃避するな。
・この作品において物語とは(極論ではありますが)恋の物語である。

これを簡単に纏めますと「部屋に篭ってエロゲばかりやっておらず、外に出ろ。恋をしろ」という我々へのメッセージなんじゃなかろうかと。エロゲ作品としては自己否定が強烈すぎる解釈だとは思いますが、私の脳内で繋がったのでとりあえず書いておきます。・・・まあ、我ながら強引すぎる解釈だとは思ってます。



・総評。

名作、かな。

類稀なる構成の巧さ、しかし感動要素の弱さもあり評価に悩むところではありましたが、長所を最大限評価する方向で決めました。プレイ中にとにかく熱中できる、没頭できる、それに値するだけの作品であるのは間違いないですし。
「魔女こいにっき」はプレイするにあたって、求められる姿勢が他作品と異なりますので、そのあたりを重々承知の上で楽しむ必要があると思います。そういう点では上級者(?)向けのエロゲになるんでしょうかね。

しばらくは作品に込められたメッセージの解読と解釈だけで相当遊べそうです。とりあえずテキストを読んで終わりではない、CGを見て終わりでもない、その先まで楽しめるそんな作品に出会えたことに感謝ですね。
製作に関わった皆様、お疲れ様でした。次回作も期待しています。
 
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